2014年4月28日月曜日

EBウイルスゲノム量の増加

2-b) EBウイルスゲノム量が増加している

についてです。これも補足事項に説明があります。

a) 病変組織(含末梢血)のEBウイルス DNA, RNA, 関連抗原およびクロナリテイの検索

  1. PCR法 (定量、定性) 
末梢血における定量を行った場合、一般に10^2.5コピー/µg DNA以上がひとつの目安となる。 定性の場合、健常人でも陽性となる場合がある。 

前述の抗体価は、あくまで免疫状態からウイルスの存在を考えるというものでしたが、技術の進歩から、ウイルスそのものを検出することができるようになりました。ウイルスのDNA=ゲノムをPCRという方法で検出しています。

末梢血=通常の採血をして、検査会社に提出することで、簡単に調べることができます。

ただし、検査方法についてはいくつかあり、結果の判定には注意が必要です。
具体的には、検査対象には
  • 全血
  • 血漿
  • リンパ球
があり、検査結果の単位には
  • コピー/mL
  • コピー/µg
があります。
診断基準の補足事項には、「10^2.5コピー/µg DNA以上がひとつの目安となる」とだけあり、ここでは検査方法の種類はわからず、検査結果をどう解釈するのかが難しいです。

例えば、LSIメディエンスのEBウイルス(EBV)-DNA定量では、

血清(または血漿)を対象とし、単位はコピー/mlです。基準値は100未満とされています。
例えば、40x10(400)と結果がでた場合、どう判断するのでしょうか?
CAEBV判断基準補足事項の10^2.5=316とは単位が異なり、400>316とすることはできません。
検査会社の基準値を指標とする方法もありますが、この検査の場合、定量下限を基準値としており、臨床的な基準値であるとはいえません。

つまり、結果がでてもこの分野の専門家以外には高低を評価できないのです。

ということで、元となる論文をあたることにしました。次に続きます。

EBウイルス抗体価の異常

CAEBV診断指針の主要決定項目は、
2) 血液検査などでEBウイルスが異常に増えている
であると前回いいました。今回はこれを詳しくみていきます。

元の文章は、
2) VCA, EA抗体価高値を伴う異常なEBウイルス抗体反応または病変組織(含末梢血)におけるEBウイルスゲノム量の増加
ですが、2つの要素にわかれていて、
2-a) EBウイルスの抗体価が異常である
2-b) EBウイルスゲノム量が増加している
となっています。

もともと、ウイルスなどは、直接測定することができず、ウイルスへの免疫反応である抗体の値を間接的に測定していた(2-a)が、最近では検査方法が発達して、直接ウイルス量を測定することができるようになった(2-b)、ということで2つにわかれています。
とはいえ、直接的なウイルス量の測定は、簡単にできるものではなく、最初は抗体価で見ていきましょうとなると思います。


2-a) EBウイルスの抗体価が異常である
については、補足事項に内容があります。
2. VCA、EA抗体価高値とは一般にVCA-IgG抗体価640倍以上、EA-IgG抗体価160倍以上がひとつの目安となる。加えて、VCAおよびEA-IgA抗体がしばしば陽性となる。 

EBVに関連する抗体はいくつかあります。
CDCのホームページによると、

  • Viral capsid antigen (VCA)
    • 抗VCA IgMはEBV感染の初期に現れ、通常4~6週で消失する。
    • 抗VCA IgGはEBV感染の急性期に現れ、発症から2~4週でピークとなり、少しずつ減りながら残りの人生の間持続する。
  • Early antigen (EA)
    • 抗EA IgGは病気の急性期に出現し、通常3~6ヶ月後には検知できないレベルに低下する。多くの人では、EA抗体の検知は、急性感染のサインだる。しかし、20%の健康な人でも、年余にわたってEA抗体が認められる。
  • EBV nuclear antigen (EBNA)
    • EBNA抗体は、通常の免疫傾向テストによって測定され、EBV感染の急性期には認められないが、発症2~4ヶ月でゆっくり出現し、残りの人生の間持続する。他のEBNA酵素免疫分析(EIA)では、偽陽性結果が報告されている。

SRLのホームページに推移についてわかりやすい図があります。

(上記ページから転載)


診断基準補足事項のVCA-IgG抗体価640倍以上、EA-IgG抗体価160倍以上ということは、回復期レベルの状態が、持続している=EBV感染が持続している、ということになります。

ちなみに、IgAは粘膜免疫の主体です。IgAが高値ということは、EBV感染が粘膜(特に咽頭)の感染を生じていることを示しています。

また、抗体価○○倍となっていますが、検査法によってこれは異なります。○○倍として結果が表現されるのは、FA法(蛍光抗体法)のことであって、EIA法(酵素免疫分析法)では2.2などと表示されます。換算表は提示されていないので、どの程度が高値であるかは、経験的判断または検査会社へ問い合わせる必要があります。